恵比寿心理療法センター EBISU PSYCHOTHERAPY CENTER

■医療・行政機関の方へ

●医療機関の先生方へのご協力とお願い

 私たちはこころに向き合うことへの認識として、個人の持つ様々な主訴・状態像は、病室という保護的な環境の提供や薬物による症状の軽減を図ることが不可欠であること、重い病態ほど体質や生物学的要因の深い関与は当然考えられることから薬物による治療は重要であると認識しております。また心理療法のみで治療をすることは事足りた援助とはならない場合も十分に認識しなければならないこと、細やかなこころの機微をきちんと見定めず、安易に癒しのカウンセリングをなすことは、その個人のこころの成熟の機会を奪うという事態を認識せねばならないとも感じております。

 私たちはこのような認識を持った上で、私たちの面接室が個人の悩みや苦しみ、苦悩といったこころを受け入れる容器としての面接室であることを目指しております。それは問題となる病理や病態の改善のみにとらわれることなく、安全で安心した環境の中で、自分というこころに真摯に向きあう面接室です。

 突然の喪失といったこころが現実に圧倒されている個人に対し、何が悪いのか・どこがいけないのかを指摘するのが面接という作業であるはずがありませんし、その方の悩み・苦悩という、その方が抱え・感じているこころに真摯に寄り添うという作業を通して、その人なりの時間と方法でその人自身のこころに向き合える力を高めていけるよう伴走していくことが責務であると考えるからです。

 クライエントの突如の変化や変容、またクライエントの状態像に沿って迅速な対応をするためにも、医療機関の先生方のお力とご協力を抜きにしての援助行為は危険ですし、無謀ですらあります。私たちが心理面接を行ううえで、精神科病院、心療内科、小児科等の医療機関の先生方のご協力の必要性は、突発性への対応や、その個人にとって最善の措置として医療機関の先生へご紹介をさせていただくためにも重要なことだと認識があるからです。また、個々の見立ての重要さ、患者様の状態像、またどのような診断がなされているのか、主治医の先生とその患者様とのやりとり・治療方針等への理解を始めとし、先生方からの指示や要請に我々は真摯に耳を傾け、臨機応変な対応をすることが、結果として患者様への理解へつながると考えております。

 先生方から頂く意見や方向性は、協働という作業において、関係性を紡ぎ、先生方・患者様、そして私たちの三者関係において、患者様へのより具体的な援助を成し遂げるためにも私たちにとって必要不可欠なことです。このようなことをご理解いただき、ご指導・ご協力を賜りたいと存じます。

●行政機関の方へ

 高齢化社会、国際化社会、情報化社会と呼ばれる社会環境の変化にともなって、社会福祉における諸制度諸施設には目まぐるしい変化があります。そうした中において、保健・医療をめぐる環境も変化をしてきています。特に日常的な健康増進と諸活動の活発化、疾病予防・医療・リハビリテーションに至る包括的・総合的・継続的医療の提唱と実施が唱えられています。施設処遇から地域ケアへとシフトされ、医療・保健・福祉のそれぞれのサービスが、十分な連携の下に総合的に提供されることが求められていますが、対象者および家族等の抱える心理情緒的な問題の比重が増加していることは見逃せません。

 私たちはこころを扱う専門家として、対象であるクライエントやその家族等が抱える心理社会的問題の解決に関与し、健常者はもとより、疾病・障害を抱える方が生活する上での問題解決への調整の役割が大切であると考えております。それは対象者の療養にともなって生じる生活上の問題と心配・不安除去のための援助は、予防的処置や早期の解決につながるからです。また、対象者の家族関係には心的葛藤が生じやすいことから、家族への配慮も大切であると認識しております。このような対象者を中心とした関係における社会への調整は、ケースワークにおける個人援助をはじめ、グループワーク、地域活動への啓発という形を取りながらネットワークの調整が必要になります。

 諸関係機関との連携において、行政機関の方々へのご協力とご指導を仰ぎながら、地域に根ざした活動を行うことは、対象者であるクライエントへの環境整備として、また援助者である私たちに必要不可欠な任務ととらえております。